Ns.新島の 第33回 糖尿病学の進歩(富山)参加レポート

目次 糖尿病の最新情報を提供します。
去る、平成11年2月26日(金)、27日(土)に、富山市にて、日本糖尿病学会による『第33回 糖尿病学の進歩』が行われました。その時の内容を簡単にお知らせします。
内容のポイントとしては…
1. 糖尿病の診断基準がかわりつつある!
2. 糖尿病の病型分類がかわりつつある!
3. 高齢者糖尿病の特徴について
4. 糖尿病と妊娠について
5. 糖尿病と肥満について
6. 糖尿病と足のケアーについて
7. 糖尿病と運動について

1. 糖尿病の診断基準がかわりつつある!?
TopTop ADA(アメリカ糖尿病学会)の報告の主要点は、
1. 空腹時血糖値を重視
2. 糖尿病と判定する空腹時血糖を今までの「140mg/dl以上」から「126mg/dl以上」に引き下げる
3. 空腹時血糖値が正常でも糖尿病でもない中間のカテゴリー(空腹時血糖値:110〜125mg/dl)を設ける
の3点である。
なぜ、空腹時血糖値を重視するのか?
理由1:空腹時血糖値は、肝臓の糖分(グルコース)を出した血糖の値であるが、食後2時間値は、腸でグルコースを吸収し、筋肉で脂肪の取り込みをするので糖の代謝過程が違う→2時間値よりも再現性が高い
理由2:検査が容易で患者さんの負担が少ない
理由3:空腹時血糖値も2時間値も合併症の1つである網膜症のリスクに関しても同じような関係である
以上のような理由により空腹時血糖値を重視しようじゃないかという動きが出てきた。
糖尿病と診断される基準としては、
1.空腹時血糖値≧126mg/dl    2時間値≧200mg/dl
空腹時血糖値が正常でも1時間値≧160mg/dlは、注意が必要!!
2.HbA1c>6.5%
HbA1cとは…1〜2ヶ月前の血糖の平均を表す指標
注:空腹時血糖値だけでよいのか?
1999年に発表されたDECODE studyでは、空腹時血糖値よりブドウ糖負荷試験120分値の方が全死亡のリスクにより重要であることが示されました。すなわち負荷後血糖値が高い程死亡のリスクが増し、一方空腹時血糖値は上昇しても死亡のリスクが増加する傾向は見られませんでした。
IFGでそれほどリスクが増加しないのに対し、IGTで動脈硬化性疾患のリスクが高くなることがわかり、空腹時値だけで診断することに対しては否定的です。

新しい診断基準と分類(1999年)

2. 新しい病型分類の紹介
TopTop 従来の病型分類は、1985年にWHOから提唱されたものであり、IDDM(インシュリン依存型糖尿病),NIDDM(インシュリン非依存型糖尿病)の言葉が定着していたが、この度、1999年中に新しい病型分類が発表されることになります。

1)1型糖尿病
細胞の破壊、絶対的インスリン欠乏に至るが、免疫機序によるものが大部分であり、自己免疫が証明できない特発性のものもある。
2)2型糖尿病
相対的インスリン分泌不全とインスリン抵抗性による糖尿病で、以前、NI DDMや成人型糖尿病と称されたもの。
3)その他特定な型
β細胞の遺伝的欠損、インスリン作用の遺伝的異常、膵外分泌疾患、薬物、感染で誘発される糖尿病と定義されたもの。
4)妊娠糖尿病
妊娠中に起こったか、妊娠時に初めて発生した種々の程度に耐糖能が低下したもの。

――― 豆知識 :インスリン抵抗性とは?―――
過食、運動不足、肥満などの状態が続くと末梢の組織でのインスリンの感受性が低下してインスリンの作用が弱まります。このことを、「インスリン抵抗性」と呼び、代償的に高インスリン血症を生じます。(余計にインスリンが必要になります) 

3. 高齢者と糖尿病
TopTop <高齢者の糖尿病はどのくらいいるの?>
全国で糖尿病は690万人といわれています。そのうち、60歳以上では、365万人(糖尿病全体の53%)、65歳以上では、260万人(糖尿病全体の40%)、75歳以上では、105万人(糖尿病全体の15%)もいます。
<高齢者の糖尿病の医学的特徴>
1) 病型としては、NIDDM(非インスリン依存型糖尿病)が圧倒的に多い
2) 明らかな高血糖症状をもつ例は、少ない
3) 糖尿病性細小血管症の合併率が多い
4) 虚血性心疾患、、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症など動脈硬化性血管障害の合併率が高い
5) 高齢者であっても高血糖は、糖尿病性細小血管症および動脈硬化性血管障害の発生、進展の危険因子となる
よって、高齢者でも厳格に血糖コントロールをしなければいけない!!
しかし、高齢者の血糖コントロールをはかる上で、種々の阻害因子があります。(糖尿病の療養生活がうまくはこべない)
<コントロールの阻害因子>
1) 認知能力の低下…理解力、実行力、低血糖回避能力などの低下
2) 闘病意欲が低い
3) 定期的な通院が困難なADL(日常生活動作)低下
4) ライフイベント(行事など)が生じ、血糖コントロールを乱す

糖尿病の病態のみならず、精神的、身体的、社会的背景を考慮し、QOL(生活の質)をより高くするといった視点から糖尿病の治療を考えなければいけません。
QOL(生活の質)を低下させる最大の要因は低血糖!! 
高齢者は、食事、運動の重要性の認識がうすく、安易な薬物療法の結果、低血糖をひきおこす。

食事、服薬チェック、シックデイ(かぜなどの病気時のこと)の対応など家族、患者さん本人が十分な指導を受けることが必要です。

* 薬の選択について
低血糖をおこさない薬 :α-グルコシダーゼ阻害剤(ベイスン、グルコバイ)、ビグアナイド剤(メルビン)、インスリン抵抗性改善剤(ノスカール)
低血糖をおこしやすくする薬 :SU剤、インスリン
※薬を理解して、低血糖に注意しなければいけません!
<治療のアウトライン>
  • 空腹時血糖値<160mg/dl HbA1c<8% …食事療法 
  • 空腹時血糖値<160mg/dl HbA1c>8%…α-グルコシダーゼ゙阻害剤、ビグアナイド、インスリン抵抗性改善剤
  • 高血糖  HbA1C>8%…SU剤
  • 薬の効果が現れない…SU剤+その他の薬併用
  • 薬の効果が現れない…インスリン

4. 糖尿病と妊娠について
TopTop 糖尿病をもつ人の妊娠は、きめ細やかなよいコントロールがなされていれば、健常婦人と同じ出産が期待できますが、これ程、医学が進歩した今日でも、妊娠を拒絶したり、死産になったりという悲劇は、決してないわけではありません。
1) 妊娠前からある糖尿病とその妊娠の問題
高血糖でいると
低血糖
飢餓性ケトーシス
ケトアシドーシス
尿路感染症の増加
合併症の増加
妊娠中毒症、羊水過多
早産
奇形(4%の確率)、巨大児
呼吸障害、低血糖
低K血症、高ビリルビン血症
多血症

※ インスリンは胎盤を通過しません。児は、3週間で自分でインスリンを産生します。
  その為、母親が高血糖でいると、児は高インスリンになり巨大児や低血糖で生まれてしまいます。

※ 妊娠するための血糖コントロール
HbA1c<6%に保たせて初めて妊娠の許可が出ます。
コントロールするためには、頻回インスリン注射と自己血糖測定は有用な手段とされています。
※ 妊娠前の注意
眼底検査をして網膜症の有無のチェックをしなければいけない!
妊娠すると、網膜症がある場合、新生血管ができて出血をおこしてしまいまいます。
単純性網膜症は、妊娠は可能であるが、前増殖性網膜症は、眼科で光凝固療法をしてから妊娠をしないといけません。
※ 妊娠中のコントロール基準
HbA1c 4.3〜5.8% 正常範囲に!
グリコアルブミン 11〜15.7%
空腹時血糖 70〜100mg/dl
食後2時間血糖 <120mg/dl
自己血糖測定 7回/日
2) 妊娠糖尿病について
妊娠糖尿病とは、妊娠時にみられる軽い耐糖能異常をいいます。
<診断基準>
空腹時血糖値≧100mg/dl いずれか二つを満たすときに陽性
※ブドウ糖負荷試験にて異常値が出た人は
   胎盤ができる24〜28週に再度血糖検査を実施する
食後1時間値≧180mg/dl
食後2時間値≧150mg/dl

<妊娠糖尿病になりやすい人>
  • 35歳以上
  • 肥満
  • 巨大児出産の経験がある人
  • 遺伝
<なぜ、妊娠糖尿病になるのか?>
  • 妊娠によって代謝が亢進する
  • 児に栄養がいくので母親はあ飢餓状態に近いため
  • 胎盤の完成によってインスリン分泌が亢進し、インスリン抵抗性がおきる
<妊娠糖尿病の食事カロリー>
妊娠前期 +150キロカロリー
妊娠後期 +300キロカロリー
授乳時  +600キロカロリー
<薬について>
SU剤は、奇形の原因にはなりませんが胎盤を通過し、児にもSU剤が効くため、児が低血糖になるので使わない方がいいとされています。

5.糖尿病と肥満について
TopTop 最近の分子遺伝学情報によると肥満は“エネルギー代謝異常!!”といわれている。
肥満細胞の遺伝子"β3 アドレナリン受容体異常"が日本人は3人に1人はいるといわれている。アメリカ人は10人に1人である。
よって、近年食事が欧米化してきたがアメリカ人と同じように食べていたら、日本人は“肥満”になる確率が高くなる。
普通の人の基礎代謝は1,200kcalだが、β3アドレナリン受容体遺伝子異常がある人は、1,000kcalと200kcalも少なくなる。
よって、食事療法のカロリーも普段の指示カロリーより200kcalは少なくしないといけなくなる。

どうやって肥満細胞の遺伝子異常をみつけるか?
採血で遺伝子の検査はできるが、まだ、高額なので頻繁にはおこなわれていない。

肥満細胞について
肥満細胞は、一種の内分泌器官であることがわかってきた。
いろいろな生活習慣病をひきおこすホルモンを分泌して合併症をおこしている事が明らかになった。
高血圧、高脂血症などこの肥満細胞からのホルモンの影響でおこっている場合もある。
よって、これらの合併症も“やせれば治る”ということである。

<やせるポイント>
1. 肥満からくる弊害を理解すること
2. 自分で目標体重をつくること
  今の体重の10%くらいを目標にし、少しずつ減量していくこと
3. ストレスによる過食を抑えるため、ストレスをうまく解消すること

6.糖尿病と足のケアーについて
TopTop 足の病変は糖尿病の合併症の1つです。足病変の種類としては大きく4種類あります。
1)感染症:蜂巣炎、膿瘍、骨髄炎
2)神経障害性関節症(シャルコー関節)
3)潰瘍、びらん
4)壊疽

糖尿病の足病変の原因は、大きく分けて3つあります。
  • 神経障害 
    1.知覚異常
    触覚、痛覚、温覚が低下する。そのため、合わない靴による圧迫を受けて靴ずれをつくっても気づかない、切り傷を受けても痛みを感じない、温覚が低下しているのに火傷に気づかないといった問題が起こり、ごく軽い潰瘍から壊疽に進展する
    2.発汗障害
    皮膚自律神経障害により発汗が減少すると、汗による皮膚浄化作用が低下して皮膚感染を生じたり、皮膚のすべりが悪くなるために外傷を受けやすくなる。また、皮膚が乾燥し亀裂を生じ、免疫力や抵抗力が低下するため感染を受けやすくなる。また、魚の目、たこなどができやすくなり、潰瘍形成の原因となる
  • 末梢循環障害(血行障害)
    糖尿病患者には、動脈硬化疾患が高率に合併することが知られている。動脈硬化症から、大、小動脈の閉塞、狭窄が生じて血行が障害される。血行障害があると、疼痛、足の蒼白が起こり虚血性潰瘍、壊死へと進展する。
    (例)足の冷え、歩くと痛いなど
  • 感染症(混合型)
    上記の原因に感染症を合併する。
    (例)みずむしの感染症から起きる壊疽

壊疽の誘因
皮膚の乾燥、亀裂
爪による小外傷
熱傷
はきもの

壊疽を起こしやすい患者
糖尿病の羅漢期間が長い
職業---長時間の立位(調理師、教師、重量物の運送など)
過去にくつずれになったことがある
喫煙者
心臓病、高脂血症、脳血管障害の既往がある人(動脈硬化)
腎臓障害のある人

足病変のチェックポイント
1.足の変形---外反扁平足、ハンマートウ、凹足、外反母趾、単純凸型三角変形、O脚、X脚、強剛母趾
2.足底---魚の目、たこ 
3.爪の変形、異常---陥入爪、爪白癬、爪周囲炎、爪の下の変色
4.足関節の可動制限
5.皮膚---乾燥、亀裂、白癬症、湿疹、外傷、静脈瘤、蜂巣炎、潰瘍
6.筋肉の萎縮の有無
7.足の色---チアノーゼ、蒼白、赤い
8.足の脈の有無
9.静脈病変の有無
10.履物のチェック
11.靴底---傾き、減り具合
12.靴の中---摩耗状態、靴壁の圧迫

日常生活で注意すべき足病変の予防法
1.毎日、足をよく観察する
  • 指の間や足底は、鏡を使ってチェックする
    水ぶくれ、切り傷、ひっかき傷、変色、はれ、魚の目、たこ、皮膚の乾燥、ひび、局所痛、感染症
  • 異常に気づいたら主治医に相談する
  • 視覚障害者は家族にチェックしてもらう
2.足浴は毎日行う
ぬるま湯や皮膚に刺激のない石けんを使って足を洗う
洗い終わったら柔らかいタオルで水分をよく拭き取る
足の指はとくにていねいに拭く
3.入浴のさいは熱傷に気をつける
入る前に必ず湯の温度を確かめる(40度以下)
4.低温熱傷に気をつける
ヒーター、こたつ、電気毛布などの温度調節
加熱器使用時は、足の近くの温度を測定して40度以上にならないように気をつける
5.火傷に気をつける
熱水の入ったビンや湯たんぽ、電気ヒーターに直接足をつけない
夜、足が冷えたら、あらかじめ暖めた厚手のソックスをはく
湯たんぽは毛布、タオルでくるむ
6.けがや熱傷を受けやすい場所は素足で歩かない
夏の砂浜、プール周囲のセメントやアスファルト上は注意する
7.足をふやけさせない
足を濡らしたまま放置しないで水分を拭き取る
汗が多い場合は靴下をこまめに取り替える
足に直接、粘着テープを貼らない
8.お灸、はり治療など、皮膚を傷つけることを避ける
9.椅子に座る生活様式が望ましい
和式の生活では座りだこやくるぶしだこができやすい
足の感覚が鈍い、むくみがある場合は「たこ」に傷ができやすい
10.禁煙を実行する
タバコを吸うと足の血の流れが悪化する
11.爪の手入れは正しい方法で行う
ハサミや鋭利な爪切りは使用しない
爪用のヤスリを使って、まっすぐ、指と直角にけずる
短くけずりすぎない
12.下、足袋(たび)は足のサイズに合ったものをはく
毎日、清潔なものに取り替える
木綿またはウール製のものを選ぶ
冬場の靴下の重ねばきは循環障害を起こす原因となる
足袋がきついと足の血流を悪くする 
13.履き物の注意
靴ははく前にチェックする:中に小石などの異物や破れがないか
靴選びははき心地の良い点を第一ポイントとし、外観や流行にとらわれない
何種類かを用意して、目的に応じたはき分けをする
新しいくつは、はきならしに十分時間をかける
強い変形やくつずれを起こして市販品が合わない場合は主治医のアドバイスを受けて専門家に相談する

7.糖尿病と運動について
TopTop 運動療法の利点
短期:血糖の是正、肥満解消
長期:インスリン作用の改善

急性代謝効果
運動時には、糖、脂質など大量のエネルギーが筋肉で消費され、肥満防止、改善効果がある
食後に運動を実施すれば、糖尿病患者の血糖値が低下する
トレーニング効果
軽度の身体トレーニングでも、長期にわたって継続すれば、2型糖尿病患者で低下しているインスリン感受性が糖、脂質代謝面で改善する
肥満者、肥満糖尿病患者に食事制限と運動を行わせれば体脂肪が減少する。一方、身体運動を実施せず、極端な食事制限で減量を行っても、過剰な体脂肪は減少せず、筋肉の萎縮を招く
個体のインシュリン感受性改善と一日の歩数とは、正の相関関係である
ジョギングなどの有酸素運動は、重量挙げのような無酸素運動より効果がある

=個別の運動療法の仕方= 
  • 正常体重の人
    軽い運動を長くし、インスリン感受性をよくする。週3〜4日しないとインスリン感受性ももどる。
  • 6000歩+食事療法だけでは、インスリン感受性は改善しない。体重減少よりどれだけ運動したかが大切である
  • 2型糖尿病の人
    食後1〜3時間に軽い運動を継続的にする
    HbA1cの改善がない人も食後に運動を実施する
  • 合併症がある人
    脳梗塞---リハビリ、水中歩行
    ASO---長く歩くと間欠性跛行になるので手だけのダンベルでも、インスリン感受性は良くなる。ダンベルの回数を多くし、休みを少なく実施する
  • 歩数4000歩の人
    6000歩くらいに目標を設定する。少なめに目標設定しないと長続きしない。現在の歩数+2000歩が目安
  • 高齢者
    500〜1000gの重さで手の運動をする。
    大腿四頭筋の運動をまずはじめ、足をきたえてから次の運動を考える。
  • 寝たきりの人
    他動的に動かす。少しずつ体を動かすようにする(ベット挙上など)
    基本は、良い機能を生かして使っていくこと。残っている機能を動かすことが大切。

運動療法の実際(指導者サイド)
1.運動療法を行う前に
メディカルチェック
問診、理学的検査、呼吸、循環器検査、糖尿病のコントロール状態、合併症の状態
フィジカルチェック
運動能力に応じた、安全で効果的な運動を選ぶための参考
どのような運動が必要かみわける
  トレーニング効果の評価
ライフスタイルチェック
職業(重労働など)、過去の経験、現在の生活環境(居住地、勤務地、交通手段など)
どの時間帯に入れるか参考にする
2.運動開始後
上記の3つをチェックし、糖尿病に対する取り組みを評価する。その結果に基づいて運動の種目、強度、時間、頻度を評価し、うまく行っていないときは、運動療法の治療法を変えていく
3.運動療法の進め方
効果の理解---治療効果、予防、体型の変化、体力に及ぼす効果、メンタル効果
患者の情報をきく---メディカルチェック、フィジカルチェック、ライフスタイルチェツク
運動処方---評価、フィードバック
4.運動療法の5つの基本
運動療法を行う際は、下記の5つを決めてから実施する
i.運動の種類(何をするのがよいか)
主食、副食、外食の考え方で、運動の種類を決めていく
主食---大きな筋肉をリズムカルに動かす運動
      ウォーキング、サイクリング、踏み台昇降など
副食---筋肉や関節の動きを整える
      ストレッッチ、体操
外食---レクリエーション
ii.運動の時間(どのくらい続けるか)
15〜60分(脂肪を減らす目的の人は60分くらい)
iii.運動の頻度(週何回するのがよいか)
疲労がなければ毎日でもよい:体調によって考える
運動の効果は2日続くので、少なくとも週3回行うようにする
iv.運動の時間帯(いつするか)
運動するには、食後1〜1時間半くらいの時間帯が理想的
v.運動の強度(どのくらいの強さでするか)
運動強度が強すぎると、インスリン拮抗ホルモンがでるので逆効果になる
運動の強さは、運動中の脈拍数を手がかりにします
やせ、低血圧の方―運動強度60%を目安
肥満、高血圧の方―運動強度40%を目安にし60分くらい続ける
=運動強度の目安=  脈拍数
運動の強度 強度の感じ方 60代 50代 40代 30代 20代
60% やや楽であるが汗が出る 120 125 130 135 135
50% 楽であるが少し汗が出る 110 110 115 120 125
40% 非常に楽である、楽しい 100 100 105 110 110

5.指導方法
自分に適した運動を体験させる
いろいろな運動の体験、強さの体験、時間の体験をさせる
目標設定をする
血糖値、体重、体脂肪、ウエスト−ヒップ比、体力などの数値で目標設定をする
ほめる
効果の確認をする−薬の減量、体型の変化など
運動療法の評価をする
定期的に評価し、再処方する−半年ごとにアンケートをする(半年くらいから運動が続かなくなる)

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