◆ インスリン調節法ABC ◆ −製剤の種類と投与法・調節の仕方について− |
|||||||||||||
インスリン治療がなぜ必要なのか、またインスリンの投与パターンと投与量の調節方法を解説しています。 インスリン製剤の種類も掲載しています。 なおインスリン注入器やインスリン注射手技については、インスリン注射法ABCをご覧下さい また関連情報として、血糖自己測定−SMBG−も併せてご覧下さい |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
1.インスリン治療の導入 2.主なインスリン製剤の作用動態−−−超速効型・速効型・中間型・持効型・混合型 3.インスリン投与法の種類−−−頻回注射(基礎−追加補充療法)と従来療法 4.強化インスリン療法におけるインスリン投与量の調節法 |
|||||||||||||
インスリン注射法ABC−各種インスリン注入器の使用法と注射の仕方について− |
どのような時期にインスリン治療を始めたらよいか、どのような投与法を行うかは、糖尿病のタイプによって異なります。 | |
■ 1型糖尿病 |
|
急性発症時は速やかに導入するのは当然、緩徐に発症してくるタイプでもなるべく早期に導入する必要があります。 一時的にインスリン必要量が減ったり不要になる時期(ハネムーン・ピリオド)もありますが、最終的にはインスリン依存状態になります。 厳格なコントロールのためには、基礎分泌と追加分泌を補って、より生理的なインスリン分泌に近づける必要があります(Basal-Bolus injection)。 |
|
■ 2型糖尿病 |
|
インスリン治療が必要となるのは、 妊娠・授乳時の血糖正常化(食事療法でコントロール不良)
などの状況です。インスリンが枯渇しているわけではないので、通常は各食前の速効型か、あるいは1日1-2回の中間型でコントロールできます。高血糖性昏睡 重症感染症、外傷、外科手術(中等度以上) 重篤な肝障害・腎障害 経口血糖降下剤無効例、副作用で使用できない例 著明な高血糖、ケトーシス、極端なやせなど高度のインスリン不足 |
|
INDEX |
■ 基礎分泌と追加分泌
|
|
下図は健常人のインスリン分泌パターンと主なインスリン製剤の作用動態を図示したものです。 正常のインスリン分泌は、基礎分泌と追加分泌にわけられます。 |
|
■ 基礎分泌の補充
|
|
食事の前や夜間就寝中等の血糖が低いときでも微量のインスリンが分泌され続けて、肝臓からの糖の放出が過剰にならないようにしています。 基礎分泌の補充には持効型・中間型インスリンが使われます。また持続皮下注入ポンプ(CSII)を使うこともあります。 |
|
■ 追加分泌の補充
|
|
食事を摂ると血糖の上昇とともにインスリンが速やかに分泌されてきます。インスリンの作用で、ブドウ糖は速やかに肝臓や末梢の組織に取り込まれます。 追加分泌の補充には速効型・超速効型インスリンが使われます。 |
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
INDEX |
インスリンの投与法には、一日1回から4回以上まで色々あり、また持続注入ポンプを使うこともあります。 大きく分けると、食事毎の追加補充と一日1-2回の基礎補充を組み合わせた頻回注射(または持続皮下注入ポンプ)で正常のインスリン分泌パターンに近づける基礎−追加補充療法と、1日1〜2回の注射でコントロールする従来法があります。 より厳格な血糖コントロールを目指す強化インスリン療法では、頻回注射に加え血糖自己測定を行い、インスリン投与量を調節していくことが必須となります。 |
|
上図のように一日1回の注射では、正常なインスリン分泌パターンを得ることは不可能です。 インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病では、食事の前に速効型や超速効型インスリンを注射して追加分泌に相当する分を補充し、就寝前の持効型や中間型で基礎分泌を補う必要があります。またこのかわりに持続皮下注ポンプを使用することもあります。 |
|
追加分泌補充 | 従来追加分泌補充に使われていた速効型インスリン(Regular insulin)は、速効型といっても効き始めるのに時間がかかり、食後血糖抑制のためには食前30分前の注射、吸収の早い腹部への注射、が必要でした。また持続時間がやや長いため食後血糖を十分抑えようとすると、次の食前血糖が下がりすぎるおそれがあります。 この欠点を解消するために開発されたのが超速効型インスリンアナログです。食直前の注射で食後血糖を下げることができますが、食事と食事の間の時間が長くなったときに超速効型の効果が切れて食前血糖が上昇する可能性がないとはいえません。 |
基礎分泌補充 | 中間型インスリン(NPH)や持続型インスリン(Ultralente)の場合はその効果に山ができてしまい、特に深夜低血糖を起こすおそれがあり朝食前血糖が不安定になる傾向がありました。少しでもピークをなくし平均して効かせるために中間型では朝夕2回に分割することがありますが、持効型インスリンアナログや持続注入ポンプ(CSII)によりピークがなく24時間安定して効果を持続させることができるようになりました。 新規インスリン製剤 |
|
|
■ 2型糖尿病に対するインスリン療法 |
|
インスリン分泌が残存している2型糖尿病に対しては、各食前の速効型・超速効型で追加分泌を補充するやり方や、1日1〜2回の中間型や混合型、持効型で全体にインスリン血中濃度を嵩上げするようなやり方があります。 ただし厳格なコントロールを必要とする場合、妊娠糖尿病では、上記1型に準じた頻回注射を行うこともあります。 |
|
INDEX |
インスリン投与量の調節のためには、血糖自己測定が欠かせません。 特に強化インスリン療法では、最低1日4回の血糖測定を行い、その結果からインスリン量を調節していきます。 調節の仕方には、いくつかの方法があります。 |
||||||||||||||||
■ Retrospective−後向き調節
|
||||||||||||||||
血糖の動きを振りかえって量を決める後ろ向き調節。 通常血糖が比較的安定して時は、2〜3日血糖の動きを見てから高すぎあるいは低すぎる時間帯に効いている責任インスリン量を調節していきます。 インスリン調節アルゴリズム−−−後向き調節の方法 |
||||||||||||||||
インスリンとその効果を反映する血糖値の関係(責任インスリン)
|
||||||||||||||||
注意しなければならないのは、朝食前血糖値の上昇で、これには暁現象(Dawn
phenomenon)とソモジー効果(Somogyi effect)という二通りの機序があります。夜注射した中間型インスリンの作用のピークが3-4時頃に来てその後徐々に効果が減弱すると、これらの機序で血糖が不安定になることが考えられます。 朝の血糖が不安定になるときは、3-4時頃に血糖を測ってみるといいでしょう。 |
||||||||||||||||
暁現象 | 夜間の成長ホルモン等の分泌により、明け方3-4時頃からインスリン必要量が増えてきます。 これに対応してインスリンが増えないと、次第に血糖値が上がっていきます。 |
|||||||||||||||
ソモジー効果 |
反跳性の高血糖で、低血糖の後に拮抗ホルモンの影響で血糖が上昇する現象です。
明け方3-4時に血糖が下がりすぎてその後血糖が上昇しすぎる場合は、夜食により血糖の下がりすぎを防いだり、就寝前の中間型を減らしたりします。 |
|||||||||||||||
|
||||||||||||||||
■ Prospective−前向き調節 |
||||||||||||||||
インスリン必要量を予測する前向き調節で、スライディング・スケールとも呼ばれます。 測定した血糖値によりその時点で注射するインスリン量を変える。 特にシックデイでインスリン必要量が増えたときはどれくらい増やしたよいのか予測がつかず、また急を要することが多いので、血糖を頻繁に測ってはそれに応じて速効型インスリンを追加していきます。 |
||||||||||||||||
注 意 | いわゆるスライディングスケールと呼ばれる前向き調節は、 血糖が低いとインスリンが少なくなり、その後血糖上昇を来す
そのため却って血糖コントロールが不安定になります。血糖が高いとインスリン量が多くなり、その後血糖低下を来す 従って通常の場合は前向き調節法を安易に適用しないようにして下さい。 前向き調節(スライディングスケール)の一例 |
|||||||||||||||
食物の中でも炭水化物が最も早く血糖上昇を来すことから、食事中の炭水化物量を計算してインスリン量を調節する方法です。 カーボカウント法により食事の自由度は増しますが、ただしカロリーを無視して良いということではなく、食べ過ぎや炭水化物以外の栄養素の過剰摂取による体重増加・肥満には注意する必要があります。 |
||||||||||||||||
インスリン/カーボ比 | 炭水化物量(1カーボ)あたりの超速効型インスリン必要量のことです。目安として下記のような500ルールで求められます。 500÷1日総インスリン量
|
|||||||||||||||
インスリン効果値 | 食前血糖値が高い時に、補正インスリンを併せて投与します。1単位の超速効型インスリンで下がる血糖値のことで、この目安は下記1800ルールで求められます。 1800÷1日総インスリン量
|
|||||||||||||||
INDEX |
1日4-5回頻回注射のパターンと調節の仕方を示します。 | ||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
■ 各食前速効型+就寝前中間型
|
||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
■ 各食前超速効型+朝・就寝前中間型
|
||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
■ 各食前速効型+就寝前持効型
|
||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
■ 各食前超速効型+就寝前持効型
|
||||||||||||||||
INDEX |
注 意 | いわゆるスライディングスケールと呼ばれる前向き調節は、 血糖が低いとインスリンが少なくなり、その後血糖上昇を来す
そのため却って血糖コントロールが不安定になります。血糖が高いとインスリン量が多くなり、その後血糖低下を来す またインスリン必要量は個々の症例で異なりますので、ここに示した調節量をそのまま適用することは避けて、必ず主治医に相談するようにしてください。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
INDEX |
DM Top 元のページに戻る | |
当サイトはフレーム表示されていないと、リンク先が正常に表示されません。 フレーム表示されていない時は、左のアイコンでUc糖尿病教室に戻ってください。 |
|
Copyright 2008 Uemura Naika Clinic(U-san),All rights reserved.
|