◆ インスリン注射法ABC ◆
−各種インスリン注入器の使用法と注射の仕方について− |
各種インスリン注入器は、正しい操作法を理解しておかないと、薬液の過量注入により思わぬ低血糖を起こしたり、血糖が不安定になるおそれがあります。 インスリン注射を行うに当たっての注意を、ペン型注入器やキット製剤によるインスリン注射法を中心に写真で解説します。 またH16年3月5日に出された自己注射用注入器オプチペンプロ1に関する緊急安全性情報などの重要な情報も掲載しています。 なおインスリン投与パターンや投与量の調節方法については、インスリン調節法ABCをご覧下さい |
■ インスリンの種類と外観 |
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インスリンには追加分泌補充に使われる速効型・超速効型と、基礎分泌補充に使われる中間型・持効型、これらの混合製剤があります。 それぞれ効果発現までの時間や効果の持続時間が違い、種類を間違えるとなかなか血糖が下がらなかったり思わぬ時間に低血糖を起こすことがあります。 またインスリンには透明なものと濁ったものがあり、混濁したものは均一になるまで混ぜないと設定した量のインスリンが入らず、血糖が乱れる原因になることがあります。 インスリン製剤はカートリッジの帯やキットのラベル・ボタンなどにより色分けもされています。自分が使っている製剤の名前(色)といつ注射するかを覚え、注射の前に確認することが重要です。 速効型・速効型の混合製剤−−−食事の30分前に注射する
超速効型・超速効型の混合製剤−−−食事の直前に注射する 持効型製剤−−−一日1回決まった時間に注射する 透明なもの−−−注射する時に混ぜる必要がない
各製剤の作用動態は、インスリン調節法ABC−主なインスリン製剤の作用動態をご覧下さい速効型インスリン
混濁したもの−−−注射する前に混ぜること(インスリン注射をする前)超速効型インスリンアナログ 持効型インスリンアナログ 中間型インスリン 混合型インスリン |
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■ インスリン製剤の濃度・容量と形態 |
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濃 度 | バイアルには従来40U/mLと100U/mLがありましたが、間違いを防ぐため2003年から100U/mLに統一されました。 カートリッジ・キット製剤は全て100U/mLです |
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容 量 | カートリッジは2005年に全て3.0mL(300単位)製剤に統一されました。 それぞれ専用のペン型注入器を使います。 キット製剤は3.0mL(300単位) バイアル製剤は10mL(1000単位) |
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形 態 | カートリッジ製剤・・・専用のペン型注入器にセットして使います。 キット製剤・・・注射器にカートリッジがあらかじめ装填されたもの。 バイアル製剤・・・インスリン用の注射器または持続皮下注入ポンプ(CSII)を使います。 |
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カートリッジには3種類の形があります。 それぞれ専用の注入器を使用しないと、過量投与などの事故につながります。 |
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■ ペン型注入器とカートリッジの組み合わせ
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オプチクリックは、サノフィ・アベンティス社のランタス注オプチクリック用のインスリン注入器で、これらはH17年8月31日で販売中止となるランタス注カート及びオプチペンプロ1の代替品です。 オプチクリックに装着できる注射針は従来、マイクロファインプラスとナノパスニードルだけでしたが、2008年11月以降、「JIS T 3226-2」に準拠したA型専用注射針であれば使用可能になりました。ペンニードルとの組合せ使用に当たっては必ず、JIS T3226-2A型表示、または保護シールのNIPRO表示を確認してください。 |
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オプチクリックは従来のオプチペンプロ1に比べると、丸く一回り大きくなりましたが、重さは変わりません。単位設定の液晶表示はオプチペンプロ1と同様ですが、耐用年数は3年に延びました。 カートリッジ交換を容易にするため、カートリッジそのものの形は大きく変わりました。ゴムピストンを押すピストン棒やホルダーがカートリッジと一体となり、先端に針取り付けのネジが付きました。そのため、カートリッジの交換は、本体の着脱ボタンを押すだけで簡単に行うことができるようになりました。ただし、スタートボタンと着脱ボタンと二つのボタンを押し間違えないように注意する必要があります。 単位設定は、1単位刻みで80単位までできます。調節は単位設定ダイアルを回すだけで簡単にできます。 |
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サノフィ・アベンティス---ランタスのサイト・インスリン24(注:H17.7/29現在、オプチクリックの情報は未掲載) | |||||
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ヒューマペンエルゴは、イーライリリー社のヒューマカート・ヒューマログカート用の注入器です。 単位設定はダイアルを回すだけです。 |
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日本イーライリリー---糖尿病サイト Diabetes.co.jp | |||
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ノボペンはノボノルディスクファーマ社のペンフィル300・ノボラピッド300用の注入器で、現在300単位用に統一されています。 単位設定はダイアルを回すだけです。 単位設定ダイアルを回しすぎた時の修正は注意が必要です。本体とカートリッジホルダーを引っ張った状態で注入ボタンを押して「0」に戻してから設定し直します。そのまま戻しても、その分余計に注入されてしまいます。 |
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ノボノルディスクファーマ(株)---糖尿病サイト | |||||
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外見はペン型注入器と似ていますが、インスリンのカートリッジが組み込まれた使い捨ての注入器で、カートリッジの交換が不要です。 先端に付ける注射針は、ペン型注入器と同じです(BDマイクロファインプラス、ペンニードル)。 他に単位設定ダイアルの大きなものもあります。 ノボラピッド・フレックスペン、ノボリン・フレックスペン イノレット ヒューマカートキット、ヒューマログキット ランタスキット(H16年1月に自主回収) |
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■ インスリン注射部位 |
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注射する部位には上腕部・腹部(臍の周囲は避ける)・大腿部・臀部がありますが、自分で注射する時は腹部・大腿部に打ちます。 同じ箇所にばかり打つと硬結を生じるので、下の図のように毎回3cmずつずらして打つようにします。 吸収される早さは、わずかに腹部が早く大腿部が遅いとされています。運動したり、注射部位をもんだりすると吸収が早くなります。また注射は皮下組織にしますが、深く刺さって筋肉注射になると早く吸収されます。 |
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毎回3cmくらいずらして注射していく |
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インスリンには様々な種類の製剤があります。 注射の前に、種類(製剤の名前と色)と単位を再確認します。 濁っているインスリンは上下に振るなどして、均一な懸濁液にします。 |
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ノボラピッド30ミックス注は特にしっかりと混ぜる 他の混合型・中間型は上下に振るだけ(右図) 泡立つくらいに激しく振り混ぜたりはしないこと |
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■ 注射針の装着
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カートリッジ先端のゴム栓をアルコール綿で消毒し、注射針を真っ直ぐ刺します。 針は注射する前に取り付け、注射の後はすぐにはずしておきます。 再使用禁止
他の人が使用した針の使用禁止 開封時に曲がってしまった針の使用禁止 |
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■ 注射の前に−空打ち |
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実際に注射する前に、まず2単位にセットして空打ちして、全てが正常に作動することを確認します。 空打ちの目的 注射針内の空気を抜く
針が詰まっていないことの確認 針が正常に装着されていることの確認 注入器が正常に作動することの確認 過量投与の予防 |
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■ インスリンの保管 |
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未使用のインスリンカートリッジ・キット製剤は冷蔵庫で保存します。 絶対に冷凍しないこと。 使用中のペン型注入器にセットしたインスリンカートリッジやキット製剤は室温で保存します。 注射針は注射の前に装着し、注射が終わったら取り外します。 冷蔵庫では保管しないようにすること。 外出時、車内など高温環境に置かないこと。 またランタス注は安定性試験の結果に基づき、使用開始後4週間を経過したものは使用しないようにしてください。 |
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■ 注射の打ち方
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インスリン注射は皮下にします。筋肉内に入らないように皮膚を軽くつまみ、針先を垂直に刺します。痩せて皮下脂肪が少ない時は45度くらい傾けます。針を刺したら、注入器のボタンを最後までしっかり押します。少しでも痛くないようにするためには、 インスリンは室温に置く
アルコール消毒する時は、乾いてから注射する 針を刺す時は素早く 針を刺していく間、針先の向きを変えない 針の再使用を避ける 筋肉の緊張を取り、リラックスする 注射してすぐに針を抜いてしまうと、針先から液が漏れてくることがあります。これを防ぐために、注射して10秒待ってから針を抜くようにしてください。 注射したところを揉んではいけません。また血液や液が出てきた時は、5-8秒軽く押さえておきます。 |
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皮膚を軽くつまんで真っ直ぐ刺す |
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■ 消毒は?
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従来、注射部位はアルコール綿で消毒し、アルコールが乾いてから注射することとされていました。 しかし最近は、手と注射部位を清浄にしておけば、アルコール消毒はしなくてもよいとされています。 衣服の上からの注射に関しては、感染を起こしたり血糖コントロールが乱れたりしたことはなく、服に血が付いたという以外に問題なく、むしろ便利で時間の短縮になったという報告があります。 |
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■ もし血管内に針が刺さったら?
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従来の注射器では血液の逆流で確認することができましたが、ペン型注入器やキット製剤ではそれができません。 通常の皮下注射で注射針が血管内に入ることはきわめてまれですが、もし血管内に注射針が入った場合、注射後早い時期(20分以内くらい)に低血糖症状が現れることがあります。 低血糖−症状と対処の仕方− |
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