血糖自己測定−SMBG−
-家でも血糖を測ってみよう-
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目 次
1.血糖と尿糖の違い
2.血糖測定の意義−−−メリットとデメリット
3.血糖自己測定の適応
4.簡易血糖測定器と測定手技
5.血糖測定プラン
6.強化インスリン療法と血糖自己測定
7.血糖自己測定のコスト
関連情報
インスリン注射法ABC
インスリン調節法ABC
低血糖−症状と対処の仕方−
簡易血糖測定器の開発により、検査室からベッドサイドにさらに自宅でも血糖検査ができるようになってきました。器械の進歩もめざましく、より短時間より少量の血液でより正確に測定できるようになりました。
最近十数年の糖尿病治療における画期的な進歩としてコントロール指標であるHbA1cとならんで血糖自己測定が挙げられますが、糖尿病の合併症を防ぐにはより厳格な血糖コントロールが重要であるということがわかってきたからです。
食事療法、運動療法、薬物療法につぐ糖尿病治療の第四の柱といわれる血糖自己測定について、その意義から測定の実際までをまとめました。
早速あなたも始めてみませんか。


1.血糖と尿糖の違い
■ 尿糖と糖尿病
従来自宅で行う検査としては尿糖がさかんに調べられていましたが、最近は血糖測定に取って代わられています。
なぜ尿糖検査では不十分なのでしょうか。
そこで尿糖が出る仕組みを下の図に示しました。
尿糖は、血液中のブドウ糖が尿に漏れて出てきたものです。正確に言うと、腎臓で再吸収しきれず尿に出てきたものです。
腎臓はたとえるならばダムのようなものです。尿の方に糖が出始める血糖値(尿糖排泄閾値)は170mg/dl前後で、血糖値がこれより高くなると尿糖陽性となるわけです。
■ 健常人
食後血糖値は160mg/dlを超えることはなく、従って通常食後でも尿糖陽性にはなりません。
■ 糖尿病患者
診断基準では食後の随時血糖値が200mg/dl以上ですから、尿糖陽性になることが多いでしょう。
空腹時の場合、診断基準では空腹時血糖126mg/dl以上ですから、尿糖が出ないというケースもあります。

■ 尿糖検査の問題点
糖尿病という病名でありながら、診断基準に尿糖のことは書いてありません。それは尿糖排泄閾値に年齢、個人差があって絶対的な指標にならないからです。
例えば、年とともに尿糖が出にくくなったり、妊娠中に尿糖が出やすくなったりすることがあります。
また人によっては排泄閾値が異常に低くて、血糖値が正常でも尿糖が出るというケースがあります。これを腎性糖尿といいます。
糖尿病の診断やコントロール状況の評価は血糖値によって行われるもので、尿糖検査は補助的なものでしかありません。
もう一つの問題として、低血糖があります。低血糖状態ではおそらく尿糖陰性となりますが、血糖値がどれだけ下がっているかは全く分かりません。
さらに神経障害のために残尿があるような状況ではどの時点の血糖値を反映するのか全くわかりません。
■ 尿糖検査のメリット
安く簡単にだいだいのコントロール状況を知ることができる
■ 尿糖検査のデメリット
絶対的な指標ではない
コントロールがどれくらい良いのか、どれくらい悪いのか厳密な評価が困難
低血糖の確認ができない
残尿の問題
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2.血糖測定の意義−−−メリットとデメリット
■ 血糖測定の意義
血糖測定器の操作が簡単に、しかも安くなったということが血糖自己測定が広まった一因でしょう。
なぜ血糖を測るとよいのでしょうか。それは何といっても尿糖より遙かに正確に厳格な血糖コントロール状況が把握できるということです。普段の血糖を正確に知り、それを治療にフィードバックするということが血糖自己測定の最も大切な目的です。

近年多くの研究で、合併症の予防に厳格な血糖コントロールが必要であるということが証明されています。
血糖コントロールと合併症
特に頻回インスリン注射による強化インスリン療法でインスリンの量を調節したり、厳格な血糖コントロールに付き物の低血糖を予知し早めに対処したりするのに、血糖自己測定は必須のものです。
症状がなくインスリン治療を受けていない安定した糖尿病でも、よりよい血糖を知るには血糖測定しかありません。

■ 血糖自己測定のメリット
糖尿病治療の動機付け
治療法へのフィードバック
  食事量、食事内容の見直し
  インスリン投与量の変更
低血糖への不安感の解除
無自覚低血糖時の早めの対処
日々の糖尿病治療への励み
シックデイへの対処、重症高血糖の回避
血糖値予測訓練
■ 血糖自己測定のデメリット
コストがかかる
採血に伴う疼痛
数字恐怖症
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3.血糖自己測定の適応
血糖自己測定の適応をまとめると以下の通りです。
1.厳格な血糖コントロール
2.薬物療法者での低血糖の認知と予知
3.シックデイなどでの重症高血糖や低血糖の回避
4.ライフスタイルに適応した薬物療法の調節
5.糖尿病妊婦
合併症予防のためには厳格な血糖コントロールが必須です。従って全糖尿病患者に血糖自己測定の適応があるといっても過言ではありません。
もちろんコストや痛みというデメリットも勘案して導入することになりますが、1型、2型を問わずどのタイプの糖尿病であってもメリットの方がデメリットを上回ることが多いようです。

■ 1型糖尿病
生理的インスリン分泌に合わせたインスリン頻回注射やポンプ療法が行われます。インスリン投与量調節のためには血糖測定が欠かせません。
この様な血糖正常化を目指した強化療法の導入に伴い、DCCTでは重症低血糖が増えたという報告もありその確認のためにも頻回に血糖をチェックしたいところです。
■ 2型糖尿病
インスリン注射をしていない安定した糖尿病であっても自己管理のためには極めて有用です。それは食事や運動の影響が分かり、それが治療に生かせるからです。
薬物療法者での低血糖の確認や、シックデイへの対処などは1型と共通です。
■ 糖尿病妊婦
流産や奇形などの妊娠合併症を防ぐには、妊娠前から血糖の正常化という最も厳格なコントロールが要求されます。このためにはインスリン治療が必要になることも少なくありません。また妊娠週数の経過に伴いインスリン必要量が増えていくため、こまめに血糖を測ってインスリン量を調節する必要があります。
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4.簡易血糖測定器と測定手技
■ 測定原理
測定チップやセンサーについた酵素(グルコースオキシダーゼ)が血中のブドウ糖と反応し、生成された過酸化水素から電気的にまたは比色定量によりブドウ糖濃度を測定するというものです。
比色定量する血糖試験チップと
専用リーダー(メディセーフ)
固定化酵素電極と
測定器(グルコカード)
■ 測定手技
器械にチップやセンサーを装着し、血液を吸引させると自動的に測定開始します。機種によっては、センサーと本体の校正番号を合わせる必要があります。
以前の器械に比べて、少量の血液で測定でき、また自動的に測定開始、拭き取り操作が不要になるなど測定手技による誤差は殆どなくなっています。
採血部位は指が一般的ですが、耳朶などその他の場所でも構いません。
採血部位をアルコール綿花で消毒し、乾燥させてから採血します。
採血の量は写真のようにごく少量です。

メディセーフによる血糖の測定

グルコカードとダイアセンサーによる血糖の測定
■ 指尖部以外の採血における注意点
最近検体量がごく少量で済むようになり、痛みが少ない前腕部等で検査する機種や採血器具が販売されています。
しかし動静脈吻合の多い指尖部に比べ、前腕部の皮静脈は血流速度が遅く、急激に血糖が上昇したり下降したりした時、その変動に前腕部血糖値は20-30分の遅れを生じると言われています。すなわち低血糖や高血糖の発見が遅れるという危険性があります。
血糖が比較的安定している時は前腕部と指尖部の血糖値にはあまり差を生じることはありませんが、急激に血糖が下がって低血糖かどうかを確認する時などは前腕部採血を避け、指尖部で測定するようにしてください。
他には手掌部(拇指球・小指球)から採血する方法もあります。こちらも指尖部に比べると痛みは少なく、また血糖値も指尖部のものにかなり近いとされています。
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5.血糖測定プラン
どのような時間帯に測ればよいか、どれくらいの頻度で測ればよいかは、個々の糖尿病の状態によって異なります。

■ 普段のコントロール状況把握のために
■ 測定ポイント
食前
食後2時間
就寝前
午前3時
■ 強化療法時の測定回数
1日7(〜8)回、1日4回(毎食前+夕食後 or 就寝前)
原則として毎日
■ 従来療法時の測定回数
1日2回(朝食前+朝食後 or 夕食後)、週2〜3回
できれば週1回は1日4回

■ 特殊な状況下では随時
■ イベント前後
普段より激しい運動をしたとき、外食・パーティーなど
■ 低血糖
尿糖では確認できません
■ シックディ
病気やケガなどのストレス下での高血糖性昏睡の予知・予防
食事摂取が減っても必ずしも低血糖になるとは限らない
頻繁に血糖を測定し、血糖上昇時には速効型インスリンを追加・増量する必要があります
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6.強化インスリン療法と血糖自己測定
強化インスリン療法は、速効型・超速効型インスリンと中間型・持効型インスリンを組み合わせた頻回インスリン注射や持続注入ポンプ(CSII)により、生理的なインスリン分泌に合わせたインスリン投与を行い、厳格な血糖コントロールを目指そうというものです。
このためには血糖値を頻回に測定し、インスリンの投与量をこまめに調節していくことが必須となります。
■ 責任インスリン
インスリン量を調節するには、どの時点で注射したインスリンがその血糖を測定した時間帯に効いているのかを知っておかねばなりません。

インスリンとその効果を反映する血糖値の関係(責任インスリン)
測定時間 インスリン
朝食前 就寝前中間・持効型
朝食後 朝食前(超)速効型
昼食前
昼食後 昼食前(超)速効型
夕食前
夕食後 夕食前(超)速効型
就寝前
深夜 就寝前中間・持効型
具体的な調節法は→インスリン治療ABC−−−インスリン投与法の種類・調節
INDEX

7.血糖自己測定のコスト
どのような時間帯に測ればよいか、どれくらいの頻度で測ればよいかは、個々の糖尿病の状態によって異なります。

■ インスリン自己注射を行っている場合
保険診療の適応となり、自己注射の指導料に血糖自己測定の費用が加算されます
測定回数(月20〜80回以上)によってその費用は異なりますが、測定器、血糖測定用のチップ・センサー、穿刺具、消毒用綿花等の費用はすべてこの中に含まれます

■ 薬物療法を行っていない場合
■ 経口抗糖尿病薬(飲み薬)治療を受けている場合
保険診療にはなりませんので、全額自己負担になります
測定器本体は9,000円〜12,000円、血糖測定用チップ・センサーが25回分で2,500円〜3,000円前後位ですが、施設によってかなり金額に差があるかもしれません
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