同じ2型糖尿病なのに・・・
インスリン分泌不全とインスリン抵抗性及び糖毒性による糖尿病の進行
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2型糖尿病はインスリン分泌不全とインスリン抵抗性とによって発症してきますが、どちらが強く関わっているかは個々の症例によって全然違っています。
これを二人の典型例で説明しましょう。
■ 目 次
1. インスリン分泌不全とは、インスリン抵抗性とは
2. ある3症例のブドウ糖負荷試験
3. インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の典型例
4. ブドウ糖毒性による糖尿病の進行


インスリン分泌不全
正常では食事をとりブドウ糖が吸収され血糖値が上がり始めると、それに対応して瞬時にインスリンが分泌されてきます。
糖尿病ではこの反応が欠如し、血糖の上昇に遅れてインスリンが分泌されてきます。
このインスリンの瞬時の反応欠如は、遺伝的なものと考えられます。
“糖の流れ”と糖尿病の進行
 
インスリン抵抗性
インスリンは分泌されているのに、様々な原因でインスリンの作用が障害された状態です。
インスリンがあっても正常に作用が発揮されないので、血糖を下げるにはそれだけ余計にインスリンを必要とします。
このインスリン抵抗性は、肥満、運動不足、ストレス等によって起こってきます。
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ブドウ糖負荷試験における血糖曲線とインスリン反応
下の図は、ある三人の患者さんに行ったブドウ糖負荷試験の結果で、左が血糖曲線、右がインスリン反応です。
上段のさんは2時間値がやや高く境界型の判定です。さんは新しい基準では正常ですが、1時間値が高く境界型に準じた扱いが必要になります。
下段のさんは完全な糖尿病型です。

2例の境界型:血糖曲線(左)とインスリン反応(右)

糖尿病型:血糖曲線(左)とインスリン反応(右)
三人のプロフィール
さん(50才、男) さん(60才、男) さん(52才、男)
身長 165.9cm 171.5cm 173.1cm
体重 63.1kg 92.8kg 81.5kg
BMI 22.9 31.6 27.2
肥満度 +4% +43% +24%
家族歴 父が糖尿病 糖尿病なし 糖尿病なし
合併疾患 なし 高脂血症
高血圧症
脂肪肝
高血圧症
脂肪肝
インスリン分泌不全と抵抗性の典型例
さんとさんを比較すると、似たような血糖曲線でありながら、インスリンの反応が全く違っていることがわかります。

さんは、負荷後30分のインスリンの反応がかなり悪くなっています。
御父様が糖尿病でその体質を受け継いだものと考えられますが、そのため普段から食事や運動には気を付けていたようです。インスリンの分泌が悪くても、食事・運動療法によりインスリンを効きやすくしてやれば悪くはならないという良い見本です。

さんには糖尿病の家族歴はありませんでした。デスクワーク中心で高度の肥満があります。
このためインスリンが効きにくく、これを代償するために大量にインスリンを分泌することで何とか血糖を下げている状態です。
この状態が長く続けば膵臓のβ細胞が疲れてしまいます。またこの多量のインスリンが、却って肥満を助長しさらに高脂血症、高血圧の合併から動脈硬化を起こしやすくします。
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ブドウ糖毒性による高血糖の確立と悪循環
上の二人のケースでは、さんのようにインスリンの分泌が悪くてもインスリンを効きやすい状態にする、あるいはさんのようにインスリンが効きにくい分多量のインスリンで代償する、といったことで何とか境界型に止まっています。
しかし血糖値がある程度高くなると、インスリンの分泌もインスリンの効きも悪くなってきます。このため血糖値が上昇し易くなり、そのことがさらにインスリンの分泌と効きを悪くして、血糖値がさらに上昇して、本格的に糖尿病を発症し、さらにインスリン分泌と作用の低下、血糖値の上昇という悪循環に陥っていきます。
この高血糖によるインスリン分泌の低下とインスリン抵抗性の増悪を糖毒性といい、これにより糖尿病が進行していきます。
この典型例が、いわゆるペットボトル症候群です。
高血糖によるインスリン分泌低下とインスリン抵抗性は可逆性で、血糖値が下がるとインスリンの分泌や効きは良くなってきます。
ペットボトル症候群
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