Uc DM Lecture-7
糖尿病の薬物療法
1型と2型の違いなど、糖尿病には様々な病態があり、
糖尿病といろいろと新しい薬が開発されてきていますが、食事療法・運動療法を守らなくても血糖コントロールが良くなるということはありません。
また全ての糖尿病に効く万能薬というのもありません。安易に民間療法に頼るのもやめましょう。
目 次 1.薬物療法の進め方
2.経口血糖降下剤(のみ薬)
3.インスリン注射
4.薬物療法と低血糖
5.膵臓・膵島移植
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関連情報 2型糖尿病に対する経口血糖降下薬療法
インスリン調節法ABC
血糖自己測定−SMBG−自宅でも血糖を測ってみよう
低血糖−症状と対処の仕方−

1.薬物療法の進め方
■ 1型糖尿病≒インスリン依存型糖尿病
インスリンの注射等による補充が必須です。
ただし、良好なコントロールのためには食事・運動療法も重要です。
経口剤ではよくなりません。
■ 2型糖尿病≒インスリン非依存型糖尿病
食事・運動療法で十分血糖が下がらない時に薬を使います。
食事・運動療法が守れていないといくら薬を使っても効きません。
薬は糖尿病を完治させるものではありませんが、必ずしも一生続けなければならないというものではありません。
漢方薬や民間療法で糖尿病が治るというのはウソ!
経口血糖降下剤(のみ薬)とインスリン注射があります。


2.経口血糖降下剤の種類と作用
インスリンを増やす薬とインスリンの効きを良くする薬、食べ物の吸収を遅らせる薬に分けられます。
それぞれの病態に応じた薬の選択が必要です。
異なる作用の薬を併用することもあります。
いずれもβ細胞の廃絶したインスリン依存状態の糖尿病(1型など)や高度のインスリン不足状態にある高血糖性昏睡などには効果がありません。
分類と商品名 作用と適応 使用上の注意
インスリン分泌刺激剤
スルフォニル尿素剤(SU剤)
オイグルコン
グリミクロンなど
膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を増やす
1回の投与でほぼ24時間効きます
最も強力、空腹時血糖も上昇してきているような状態
肥満があると使いにくい
他ののみ薬に比べて血糖を下げる作用は強力ですが、食事療法を守らないと体重が増えやすくなります
高血糖が改善しないまま使い続けると却ってβ細胞が疲弊する
低血糖に注意SU剤に準じる
膵外作用を併せ持つSU剤
アマリール
膵β細胞からのインスリン分泌を刺激するほか、
末梢での糖取込、肝糖放出抑制などの膵外作用を併せ持つ
既存のSU剤に比し肥満を来しにくい
速効型インスリン分泌促進剤
スターシス
ファスティック
膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を増やす
SU剤より吸収が早く、持続時間が短いので追加インスリン分泌を増やしたいときに使用
食後血糖の高い軽症糖尿病
食事直前に飲まないと効果がない
低血糖を防ぐには食前10分以内に服用することが必要です
糖質吸収遅延剤
αグルコシダーゼ阻害剤
(α-GI)

ベイスン
グルコバイ
セイブル
消化酵素の働きを抑え、炭水化物の吸収を遅らせ食後血糖の上昇を抑制する
食後血糖の高い軽症糖尿病、SU剤との併用
食事直前に飲まないと効果がありません
お腹が張る、ガスが増えるといった副作用があります
α-GI投与下で低血糖を起こしたときにはブドウ糖投与が必要
インスリン感受性改善剤
ビグアナイド剤(BG剤)
メルビンなど
肝臓での糖新生抑制、末梢での糖利用促進、消化管からの糖吸収抑制等の作用
体重増加を来しにくい
肥満型の糖尿病、SU剤との併用
まれに乳酸アシドーシスという重篤な副作用を起こすことがあり、重症の肝障害や腎障害には使えない
インスリン感受性改善剤
(チアゾリジン系)

アクトス
末梢でのインスリンの効きをよくすることで血糖を下げる
肥満型で高インスリン血症を伴う糖尿病、SU剤との併用
重篤な肝障害を起こすことがあり、定期的に肝機能を調べる必要があります
その他浮腫や体重増加


3.インスリン
■ インスリン製剤
インスリンは吸入薬も開発されていますが、現在利用できるのは注射製剤だけです
濃度
全て100U/mlに統一されています
容量
カートリッジ・キット製剤は3.0ml(300単位)
バイアル製剤は10ml(1000単位)
形態
カートリッジ製剤・・・専用のペン型注入器にセットして使います。
キット製剤・・・注射器にカートリッジがあらかじめ装填されたもの。
バイアル製剤・・・インスリン用の注射器または持続皮下注入ポンプ(CSII)を使います。

各種インスリン製剤
■ 基礎分泌と追加分泌
下図は健常人のインスリン分泌パターンと主なインスリン製剤の作用動態を図示したものです。
正常のインスリン分泌は、基礎分泌と追加分泌にわけられます。
■ 基礎分泌
食事の前や夜間就寝中等の血糖が低いときでも微量のインスリンが分泌され続けて、肝臓からの糖の放出が過剰にならないようにしています。
基礎分泌の補充には持効型・中間型インスリンが使われます。また持続皮下注入ポンプ(CSII)を使うこともあります。
■ 追加分泌
食事を摂ると血糖の上昇とともにインスリンが速やかに分泌されてきます。インスリンの作用で、ブドウ糖は速やかに肝臓や末梢の組織に取り込まれます。
追加分泌の補充には速効型・超速効型インスリンが使われます。
健常人のインスリン分泌と
インスリン製剤の作用動態
超速効型インスリン 15min 0.5-1.5hr 3-5hr
速効型インスリン 30min 1-3hr 8hr
混合型(二相性)インスリン 0.5-1.0hr 2-8hr 18-24hr
中間型インスリン 1.0-2.0hr 4-8hr 18-24hr
持効型インスリン 1.5hr 24hr

作用発現
時間
最大作用
発現時間
作用持続
時間
■ インスリン投与法の種類
インスリンの投与法には、一日1回から4回以上まで色々あり、また持続注入ポンプを使うこともあります。
大きく分けると、食事毎の追加補充と一日1-2回の基礎補充を組み合わせた頻回注射(または持続皮下注入ポンプ)で正常のインスリン分泌パターンに近づける基礎−追加補充療法と、1日1〜2回の注射でコントロールする従来法があります。
より厳格な血糖コントロールを目指す強化インスリン療法では、頻回注射に加え血糖自己測定を行い、インスリン投与量を調節していくことが必須となります。
■ 1型糖尿病に対する基礎−追加補充療法
インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病で良好な血糖コントロールを得るためには、追加分泌と基礎分泌とを補充して生理的なインスリン分泌パターンに近づけることが必要です。しかし上図のように一日1回の注射では、正常なインスリン分泌パターンを得ることは不可能です。
食事の前に速効型や超速効型インスリンを注射して追加分泌に相当する分を補充し、就寝前の持効型や中間型で基礎分泌を補う注射法が基本となります。またこのかわりに持続皮下注ポンプを使用することもあります。
■ 2型糖尿病に対するインスリン療法
インスリン分泌が残存している2型糖尿病に対しては、各食前の速効型・超速効型で追加分泌を補充するやり方や、1日1〜2回の中間型や混合型、持効型で全体にインスリン血中濃度を嵩上げするようなやり方があります。
ただし厳格なコントロールを必要とする場合、妊娠糖尿病では、上記1型に準じた頻回注射を行うこともあります。
下記のページで詳しく解説しています


4.薬物療法と低血糖
薬が効き過ぎてインスリンが過剰となり、血糖値が下がり過ぎた状態です。
食事・運動療法だけの人には起こりません。
■ 低血糖を起こす薬剤−−−インスリン量が増えるもの
インスリン注射
スルフォニル尿素剤
速効型インスリン分泌刺激剤
■ 低血糖を起こさない薬剤−−−インスリンを増やさないもの
αグルコシダーゼ阻害剤
ビグアナイド剤
チアゾリジン系インスリン感受性改善剤
■ 低血糖の症状
異常な空腹感
手足のふるえ
冷や汗
動悸・頻脈
頭がぼんやりする
物が二重に見える
錯乱状態
昏睡
■ 低血糖の原因
インスリンや経口血糖降下剤が多すぎる、量を間違えた
食事が少な過ぎた・食事を抜いた・食事が遅れた
運動をしすぎた・空腹時に激しい運動をした
■ 処置と治療
直ちに砂糖 20gを飲む
 通常10〜20分で症状は消失します
 砂糖を多く含むジュース・コーラや蜂蜜等でもかまいません
グルカゴン注射
 痙攣・昏睡等自分では対処できない低血糖の時、家族等に注射してもらう
インスリンや経口血糖降下剤の投与を受けている人は、外出時は必ず砂糖を持ち歩くようにしてください
また、家族や周囲の人も低血糖の症状や対処のしかたを十分理解しておくことが重要です
■ 重 要
グルコバイ錠、ベイスン錠といったαグルコシダーゼ阻害剤(グルコバイ錠、ベイスン錠)を併用しているときに起こった低血糖は、砂糖を飲んでもすぐには吸収されず、低血糖からの回復が遅れます。
この場合は、ブドウ糖(またはブドウ糖を多く含む清涼飲料水等)を飲むようにして下さい。
詳しくは低血糖−症状と対処の仕方−ご覧下さい


5.膵臓・膵島移植
1型糖尿病や不安定型(brittle)、膵全摘後の糖尿病に対しては、膵臓の移植もあります。
膵臓が生着すれば、インスリン注射からの離脱が可能になります。
脳死からの臓器提供が可能になり、移植という治療法も選択肢の一つになっていくでしょう。
■ 膵臓移植の種類
■ 膵島移植
膵臓のランゲルハンス島を単離して移植する
■ 膵臓移植−−−インスリンを増やさないもの
膵臓を移植する
■ 膵腎移植
膵臓と腎臓を同時に移植する
膵臓だけの移植より生着率が良い
膵臓・腎臓移植に関する詳しい情報は
膵臓移植に関しては、 九州大学医学部第一外科の公式ホームページをご覧ください
膵島移植に関しては、 福岡大学膵島移植斑の解説をご覧下さい
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