Uc DM Lecture-8
糖尿病コントロールの目標 |
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1990年代、糖尿病のコントロールと合併症に関する大規模な前向き研究の結果が相次いで発表され、合併症の発症阻止・進展予防に良好な血糖コントロールの維持が重要であることが裏付けられました。 検査の意味と目標についてまとめました。 体重・血圧や検査結果は必ず糖尿病手帳に記録してもらい、その数値に関心を持つようにして下さい |
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目 次 | 1.血糖コントロールと合併症 2.血糖コントロールの目標 3.糖化現象と血糖コントロールの指標 4.体重と血圧 5.脂質代謝と動脈硬化 6.その他の検査 |
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関連情報 | 合併症に関する大規模臨床研究(DCCT Study、Kumamoto Study、UKPDS) BMIと肥満度の計算 Lecture3b 糖尿病の慢性合併症 |
1990年代に相次いで厳格な血糖コントロールにより合併症のリスクを軽減できるという前向き研究が相次いで発表されました。 最初に注目されたのが、1983-1993年インスリン依存型糖尿病を対象にアメリカ・カナダで行われたDCCT Studyです。 血糖値を正常域に近づけることで各種合併症のリスクは下記のように減少させることができると報告されました。 網膜症の危険を76%減少させる
この後、インスリン非依存型糖尿病を対象に行われた研究熊本スタディ・UKPDSでも、厳密な血糖コントロールにより合併症のリスクを減少できるということが証明されています。腎症の危険を50%減少させる 神経障害の危険を60%減少させる 心血管疾患の危険を35%減少させる |
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DCCT studyより |
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コントロール不良な状態が長く続くと、合併症の発生も高率になります HbA1cが1上昇すると、合併症の危険は2倍 糖尿病に伴う合併症の発症阻止、進展予防のためには少なくとも“良”以上を目標にしましょう |
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この図は坂根直樹先生の図を元に作成し、許可を得て掲載しています。 | ||||||||||||||||||||||||||||
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■ 蛋白の糖化と合併症 |
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人間の体を構成しているタンパク質とブドウ糖が結合する現象を糖化と呼んでいます。 血糖値が高くなると、糖化されるタンパク質も増加します。 糖化現象によりそのタンパク質の正常な機能が失われ、これが合併症や老化につながると考えられています。 どれくらい糖化されているかを測ることは血糖の状態がわかるだけでなく、合併症の危険を評価するという意味で重要です。 |
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■ 糖化蛋白と各種血糖コントロールの指標 |
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■ グリコヘモグロビン HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
赤血球の中にある酸素を運ぶ色素がヘモグロビンです。
■ グリコアルブミン GA
このヘモグロビンにブドウ糖がくっついたものがグリコヘモグロビンです。 赤血球の寿命と関係するため、過去約1〜2ヶ月間の血糖値の平均を反映します。2〜3日食事療法を守って血糖値が一時的に下がってもHbA1cは全く影響されず、したがってごまかしはききません。また1日や2日くらいの食事の乱れも、HbA1cには現れません。 なお、赤血球の寿命が短くなる一部の貧血などでは、実際よりも低めの値となることがあります。 血清中の蛋白の半分以上を占めるのがアルブミンで、このアルブミンの糖化度を測ったものです。
■ フルクトサミン
HbA1cよりも短期間の2週間前後の血糖コントロールの指標となります。 そのため治療開始初期や治療変更時には、HbA1cよりも速やかに改善し動きを鋭敏にとらえることができます。 またHbA1cよりグリコアルブミンの方が食後高血糖を反映しやすいとされています。 目安としては、 GA/3≒HbA1c 例えば、GA 19.5がHbA1c 6.5にほぼ相当します グリコアルブミンと同様の検査です。
■ 1・5-アンヒドログルシトール 1・5-AG
ただし糖化蛋白の絶対量を測定するので、低蛋白血症の状態では低くなってしまいます。 腎臓(尿細管)でブドウ糖と競合的に再吸収されるので、血糖コントロールが不良で尿糖が多いときは低下し、改善すると上昇してきます。
HbA1cやグリコアルブミンに比べより短期間の血糖コントロールの指標となります。また食後高血糖にも鋭敏です。 なおこの検査だけは、上の三つと異なり糖化現象の指標ではありません。 |
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■ 体 重 |
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肥満度は、BMIにより判定します。 標準体重とはBMI=22となる体重で、この標準体重を元に、一日の摂取カロリーを決めます。 BMI≧25は肥満の判定となり、糖尿病だけでなく高血圧・高脂血症などのリスクが増えます。 食事療法が守れているかどうかの最も良い指標になります。 BMI=(体重kg)/(身長m)2 標準体重=22×(身長m)2 BMIと肥満度の計算 |
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■ 血 圧 |
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高血圧は合併症にも悪影響を及ぼします。 高血圧の基準は140/90mmHg以上ですが、それ以下の血圧(前高血圧:120-139/80-89mmHg)でも他に心血管リスクが存在する時には高血圧ぬ準じて対処すべきであるというのが最近の考え方です。 糖尿病と高血圧の合併はきわめて動脈硬化を起こしやすく、そのためより早期に厳格に降圧治療を行う必要があります。糖尿病の存在は3個以上の危険因子と同等のリスクとされ、血圧130/85mmHg以上なら生活習慣修正に加え、薬物療法を開始すべきとされています。 糖尿病合併時の降圧目標 130/80mmHg以下 |
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■ 血清脂質と脂質異常症の基準
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総コレステロール TC
コレステロールの増加は動脈硬化の危険因子として有名です。
HDLコレステロール HDL-C
総コレステロールが増えると虚血性心疾患・脳血管障害が増加します。 動脈硬化を防ぐ善玉コレステロールで、HDLが低いほど虚血性心疾患の発生率が高くなります。
LDLコレステロール LDL-C
運動により増やすことができます。 動脈硬化の元凶となる悪玉コレステロール。
トリグリセリド(中性脂肪) TG
直接測定法または下記Friedewaldの計算式で求めますが、TG≧400mg/dLの時は直接測定法でLDL-Cを測定します。 LDL=TC−HDL−TG/5 摂取カロリー過剰やアルコールの飲み過ぎ、運動不足で高くなります。
TGが1000mg/dLを越えると膵炎を起こすことがあります。 またTGの上昇はPAI-1を増加させ血栓ができやすい状態になります。 |
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■ カテゴリー別管理目標値
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J-LITなど多くの疫学調査や観察結果・介入研究の成績をもとに、日本動脈硬化学会から『動脈硬化性疾患診療ガイドライン』が発表されました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
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■ 肝機能検査 | 主な項目としては、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPがあります。
脂肪肝は糖尿病にしばしば合併しますが、ALT優位の上昇が見られます。
常習飲酒家では、γ-GTPの上昇が目立ちます。 |
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■ 腎機能検査 | 尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)は腎機能の低下に伴って上昇してきます。 腎症の評価のためには尿蛋白・尿アルブミン検査も重要です。 Lecture3b 糖尿病の慢性合併症(腎症) |
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■ 尿酸(UA) | 尿酸値が増えると、痛風や尿路結石・腎障害を起こします。 肉類や甘いもの、アルコールの摂り過ぎで増加します。 |
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■ その他 | 定期的に胸部X線、心電図、消化管の検査を受けるようにしましょう | ||||||||||||
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Lecture9 日常生活での注意 | |
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