8月9日に長崎にゴールしたリレーマラソン一行のうち、楽松師匠だけは折り返して広島へ向かわれる。例年、その長崎〜広島ピースランをサポートしたり併走したりしていたが、今年は富士山を登ることになった。
子供の頃、千葉と東京に住んでおり、空気の澄んだ日は遠くに富士山が見えていた。しかし、なぜか登ったことはない。3000m級の山は小学校3年の時に西穂高・独標(2909m)、大学1年の時に白馬岳(2932m)を登っているが、3000mを越えたことはない。
同行する仲間に聞いたら、5合目までバスなのでハイキング感覚ですと言う。しかし知り合いのアウトドアショップ・オーナーに聞けば高山病対策に7-8合目で一泊、水を十分持っていけ、携帯酸素の他に飲む酸素、ウェアは軽くて断熱性のある物、トレッキングポール必須、等々話を聞けば聞くほど不安になって来る。アドバイスに従い、30Lのリュック等を購入した。軽いリュックだったが、2Lの給水タンク、さらにカメラ(一眼レフ、デジカメ)や着替えで、装備は10kgになった。交通費込みで10万円超の出費も痛かった。ちなみに靴はトレールラン用のLA SPORTIVA Rajas。2台のカメラで撮った写真は
富士山御来光写真館2007に載せていますので、併せてご覧下さい。
11日、13時に仕事を終え、北九州空港から羽田へ飛ぶ。羽田空港で腹ごしらえ、19時、待ち合わせ場所の新宿へ。新宿から19:50発の五合目行き直行バスに乗る。22時過ぎには河口湖口五合目に着くのである。便利。その五合目行きバスは4台、全て満席、夏山シーズンの真っ只中なのである。五合目に着くと、大量の登山客がバスから降りてきた。殆どはさっさと登山道へ向かったが、ここ五合目で標高2305m、高地に馴らすためしばらくぶらぶらしていた。気温15℃、別天地。そして23時、登山開始。
五合目から六合目はほぼ平坦、六合目を過ぎて本格的な上りになる。序盤なのでまだまだ余裕。下界には富士吉田の街明かり、見上げれば登山客のライトが連なり、きれいだった。いつしか木は無くなり、ゴツゴツした大きな岩の急斜面となってきた。手も使って登る。少し頭が痛くなってきた。それにしても登山客が多い。何度も立ち止まる。特に山小屋周辺は登山客でごった返し、なかなか前に進めなかった。AM1時、七合目・鳥居荘2900mで小休止。
七合目を過ぎると小さな火山礫の斜面となる。傾斜は緩くなったが、ズルズル滑って登りにくい。立ち止まったり寝ころんだりする登山客も多くて、はっきり言って邪魔。その間を縫うように登っていく。寒くなってきたので、4枚重ね着した。高度を増すに連れ直ぐ息が上がるようになり、何度か携帯酸素を吸った。それでもひどい高山病の症状が出なかったのは、渋滞してゆっくり登ったせいかもしれない。AM2時前、八合目・太子館3100m着。さらに1時間で元祖室3250m、本八合目・胸突八丁・富士山ホテル3400mには3時半過ぎに着いた。風が冷たい。立ち止まっているとどんどん体が冷えてしまう。
AM4時過ぎ、東の空が明るくなってきた。かすかに山中湖が見える。その時、東の空から細長い月が昇ってきた。夜明けの空に月、なんとも幻想的な光景だった。大渋滞でなかなか動かないので、岩にカメラを固定して月の写真を撮った。AM4時半、八合五勺・御来光館3450mに到着。山頂での御来光を諦め、御来光館の少し上で御来光を待つことにした。だんだん空が明るくなって来る。待つこと15分、地平線から太陽が顔を覗かせた。空はきれいに晴れ渡り、麓は雲海に覆われていた。素晴らしい御来光だった。
さて登山再開、と思ったら前がつかえて全く動かない。しかたなく下山道へと迂回した。小さな砂礫の道、これまたズルズル滑って登りにくい。トレッキングポールを両手に持ち、じわじわと登る。そして6時15分、河口湖口・須走口山頂に着いた。人をかき分けながら富士浅間大社東北奥宮・久須志神社に行き、お守りを買った。少し吐き気がしたので、酸素を吸いながら一休み。
AM7時、反時計回りでお鉢巡りへ。目指す剣ヶ峰3776mはもう目の前。足が軽くなった感じ。途中でランパン姿のランナーとすれ違う。富士登山競走のトレーニングだろうか。7時半、剣ヶ峰直下に到着。階段を上った数メートル先が日本最高峰。しかし、順番待ちの行列がズラーッ!。おとなしく並んで30分、ついに日本最高峰剣ヶ峰3776mに立った。他の登山客と順番に写真を撮って直ぐに下山開始。2時間ほどで河口湖口・須走口山頂に戻ってきた。ここからは先ほど苦労して登って来たブルドーザー道を一気に駆け下りる。上から眺めると、大勢の登山客が駆け下り、下山道に沿って砂煙の帯ができている。夏山シーズンだけで2万人の登山客が訪れるらしいが、山の形が変わるのではないかと思えるくらい。でも楽しい。1時間ほどで一気に七合目まで下りたが、目や鼻・耳に砂が入り込み、全身砂埃で真っ黒だった。そしてAM11時半、無事、河口湖口五合目に戻ってきた。
バスで河口湖に下山、タクシーでふじやま温泉へ行き、砂埃をきれいに落とした。電車で東京に戻り、日没間際に羽田空港着。空港ターミナルビル屋上に上がり、しばらく富士山を眺めていた。